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現代人の体を蝕む不健康現象①過呼吸

 みなさんこんにちは。学芸大学駅徒歩5分、パーソナルトレーニングSTUDIO BE FREEトレーナーの吉田です。

 前回の記事では『人はなぜ疲れるのか』と題して、現代人特有の「病気未満の体調不良」についてご紹介してきました。

 今回からはさらに「現代人の体を蝕む不健康現象」を4つご紹介していきたいと思います。今回はその中の1つ、「過呼吸」です。

 

目次

現代人は「細胞レベルで酸欠」になっている!?

 酸素は私たちの体を構成する細胞の生命線です。ところが今、「細胞レベルの酸欠」を招く不健康現象が多くの人の身に起きています。それが、吐く息の量に対して吸う量が多過ぎる「過呼吸」と呼ばれる現象です。

 こう聞くと「息を吸う量が多いのに酸欠ってどういうこと?」と不思議に思われるかもしれませんが、これには体の仕組みが深く関わっています。後ほど、詳しくご説明していきます。

呼吸はヒトが最も多く行う運動であり、「全ての運動の基礎」

 あまり知られていませんが、じつは運動学においては「呼吸」も運動の1つとされています。

 そして、ヒトが行う運動のなかで最も多いのが呼吸なのです。その数、なんと一生の間に約6億回!1日で2万回以上の呼吸が行われ続けている計算になります。私たちは、無意識のうちに途方もない数の運動を毎日続けているんですね。呼吸は生命活動の基礎であり、生命を維持するために最優先される運動です。

 たとえば、食べ物がない状況下でのヒトの生存時間は10日〜3週間ほど、水がない状態では72時間と言われています。しかし呼吸停止の状態が10分間続くと、死亡率はなんと50%程度に達します。息が4〜6分の間止まっていると、低酸素によって意識を失い、やがては心臓も止まってしまうからです。

筋トレやスポーツにおいても呼吸は超重要

 また、呼吸は「全ての運動の基礎」とも言われています。これは、良い姿勢を保つ、歩く、走るなどの日常生活動作はもちろん、筋トレやスポーツも含めたあらゆる運動においてです。

 なぜなら、私たちは活動するために必要なエネルギーを体内でつくる際に酸素を必要とするから。また、呼吸で使われる「横隔膜」という筋肉は体幹のインナーマッスルとしても重要な働きを担っているからです。

 このため呼吸が正しく行えていないと、日常生活はもちろん、ダイエットやボディメイクのための筋トレの効果も大幅に減少してしまいます。

呼吸が適正化されなければ、動作を適正化することはできない

 運動指導者の間で有名な言葉で「呼吸が適正化されなければ、動作を適正化することはできない」というものがあります。

 動作を適正にできない(=正しい体の使い方に変えられない)ということは、体はよい方向に向かわないということ。言葉通り、健康への道は呼吸から始まると言っても過言ではありません。
 

現代人の9割が正しく呼吸できていない!?

 ところが、現代の多くの人はそんな超重要な呼吸が正常に行えていません。一説では現代人の9割以上の人が正しく呼吸できていない!とも言われています。

 僕自身、10年以上パーソナルトレーナーとして多くの方の呼吸機能をチェックしてきましたが、はじめから正しく呼吸ができていたクライアント様にお会いした経験はほとんどありませんでした。

理想的な呼吸量とは?

 冒頭で吐く息の量に対して吸う量が多過ぎる「過呼吸」は健康に良くないと述べました。では、逆に理想的な呼吸はどのようなものかと言いますと、

▪1分間で10回以下

▪1回の呼吸での換気量は450〜500ml

が理想的な呼吸の回数と量とされています。とは言え、おそらくこの数字だけを聞いても実感がわく方は少ないのではないでしょうか?

 後ほど、より「自分の呼吸が理想的な呼吸量か、過呼吸か」を判定できるチェック方法をご紹介します。

じつは呼吸では酸素よりも二酸化炭素が重要!?

 タイトルにもある通り、じつは呼吸においては酸素よりも二酸化炭素のほうが重要とされています。

 二酸化炭素と聞くと、「地球温暖化の原因」「換気が悪い状態など、マイナスなイメージが持たれがち。また「自動車の排気ガス」と同じような印象をお持ちの方も多いのではないでしょうか?

 しかし、じつは呼吸で吸った酸素が体内で活躍できるのは、この二酸化炭素のおかげなのです。

酸素が細胞まで行き届くためには二酸化炭素が必須!

 なぜ呼吸において二酸化炭素が重要なのか?その理由は「呼吸で吸った酸素が脳や体の細胞に行き届く過程」を見ていくと分かります。

 呼吸で吸った酸素は気道を通って肺に入ります。そして肺の中の肺胞と呼ばれる場所から血液に入り、赤血球中のヘモグロビンにくっつくことで全身へと運ばれていきます。

 この時、血液中の二酸化炭素が酸素とヘモグロビンを切り離すことで、体中に酸素が供給されるのです。いわば、二酸化炭素は酸素を脳や体の細胞に届ける際の橋渡し役を担うと言っていいでしょう。

普段呼吸で吐いている二酸化炭素は「余った分を排出しているだけ」

「でも呼吸って酸素を吸って二酸化炭素を吐くものじゃないの?」と疑問に思われる方もいらっしゃるかもしれません。それ自体は間違っていないのですが、問題なのは「必要以上に多く吸って、吐く呼吸」、つまり「呼吸の量が多過ぎる」ことです。

 なぜなら、酸素を多く吸い込んでも、吐き出す二酸化炭素の量も多くなるから。すると、体は二酸化炭素不足になり、酸素がうまく体中に運ばれなくなってしまうのです。

 結果、脳や体の細胞にスムーズに酸素が行き届きにくくなり、「細胞レベルで酸欠状態」になってしまうというわけです。

 このように、呼吸で吸った酸素をスムーズに体に行き渡らせるためには体に一定量の二酸化炭素が必要だということです。普段呼吸で吐いている二酸化炭素は、あくまで「余った分を排出している」のに過ぎないのです。

脳は二酸化炭素の量で呼吸リズムを決めている

 私たちの脳は体内の二酸化炭素の量によって呼吸リズムを決めています。

 具体的には脳の延髄と呼ばれる箇所に「呼吸中枢」と呼ばれる呼吸の司令塔があり、体の中の二酸化炭素量をモニタリングしているとされています。

 二酸化炭素が一定量まで増えると、この呼吸中枢がその情報をキャッチし「息を吸って!」と体に信号を出します。ここで呼吸の速度やリズム、深さが決められるのです。

呼吸はその時々の状況に応じて変化するもの

 呼吸の速さや深さは、その時々の状況に応じて変わるのは、みなさんも実体験として感じていると思います。

 たとえば、全力で走った後などは「ハアハア、ゼイゼイ」という荒くて速い呼吸になるかと思います。これは激しい運動時には酸素を大量に消費し、その分体の中に二酸化炭素も多く発生するからです。

 これは、呼吸中枢は消費した酸素を速やかに取り込み、余剰の二酸化炭素を排出するために体に「大きく吸って、吐いて」と信号を送っているから。

 やがて体に酸素が行き届き、二酸化炭素量が正常になると徐々に呼吸は落ち着き、平常時の「静かな呼吸」へと戻るというわけです。

過呼吸を引き起こす原因

 このように、私たちはその時々の状況に応じて応じて呼吸を調整しています。

 ところが、冒頭でご紹介したように、今、吐く息の量に対して吸う量が多過ぎる「過呼吸」の人が増えています。その理由は現代人の生活傾向にあります。具体的には、

▪️ストレス漬けの生活、
▪️栄養が不足、偏った不適切な食生活

などによって、交感神経優位のON状態が必要以上に長く続いている人が増えているため。交感神経が優位なON状態の体は「闘争と逃走」に備え、呼吸を多く行い、血中の二酸化炭素は減少するためです。

過呼吸が24時間続くと、「浅い呼吸」が定着してしまう!?

 過呼吸によって二酸化炭素が少ない状態が24時間以上続くと、体の二酸化炭素への耐性が低くなってしまいます。すると、呼吸中枢が「息を吸って!」という信号を出すタイミングが本来より早まってしまい、どんどん体に必要な二酸化炭素を吐き過ぎるようになってしまうのです。

 慢性的な過呼吸で体の二酸化炭素への耐性が低くなる→呼吸中枢が呼吸を指示するタイミングが早くなる→体からどんどん二酸化炭素が排出され、脳や体の細胞に酸素を届けるための二酸化炭素が不足する→細胞レベルで酸欠状態になる→酸素が足りないので、さらに呼吸を増やす・・・

 この負のスパイラルによって、徐々に浅く速い呼吸が常態化してしまうのです。

細胞レベルの酸欠が体に及ぼす悪影響

 ここまで「細胞レベルの酸欠」を引き起こす過呼吸についてご紹介してきました。

 酸素は食事で摂った栄養分を分解し、エネルギーを生成する際に利用されています。そのため、過呼吸によって酸素がスムーズに体に取り込めなければ、エネルギー不足になってしまいます。そうなれば体は疲労を回復することはできません。

▪️寝ても疲れが取れない

▪️いつも体がおもだるい

といった現代人特有の不調の原因の1つは、まさにこの過呼吸なのです。

息止めテスト

 ここまで、「細胞レベルの酸欠」を招く過呼吸についてご紹介してきました。

 とは言え、実際「自分が普段行っている呼吸が適正なのか、過呼吸なのかどうか」が肌感覚で分かる方はあまりいらっしゃらないかと思います。

 そこで、自分の呼吸の量が正常かどうか(過呼吸か否か)を客観的に判定できる『息止めテスト』をご紹介します。

テスト概要

 これは苦しくなく息を止めていられる時間で「二酸化炭素が溜まっていくことに体が慣れているか」をチェックするテストで、細胞レベルで酸欠を起こしていないかを知ることができます。

 テストを実施するタイミングとしては起床後すぐがおすすめです。

 我慢を競うのではなく、「息を止めてから吸いたくなるまでの時間」を計測するテストなので、くれぐれも「息苦しくなるまで我慢して息を止める」ことはしないように注意しましょう。

 計測中に首やお腹に力が入る、息が苦しいと感じる、あるいは計測後に思わず「プハーッ」と口で息を吸ってしまう場合は、我慢して息を止めてしまっているサインです。

チェック手順

① ストップウォッチを用意して、姿勢を正して楽に椅子に座る。

② 呼吸を落ち着かせたら、鼻から少し息を吸う。

③ 小さく溜息をつくように鼻から息を少し吐き出す。

④ 息を吐き出したら素早く華をつまみ、息を止めたらストップウォッチをスタートさせる。

⑤ 息を吸いたくなるまでの時間を測る。

 ※くれぐれも我慢せず、少しでも息を吸いたくなったら、そこでストップウォッチを止めましょう。

⑥ これを3回行い、タイムの平均を出す。

チェック結果と考察

▪30秒以上:おおむね良い状態。40秒以上が理想なので、まだ伸び代あり。

▪20〜29秒:過呼吸の可能性あり。普段の呼吸で脳にスムーズに酸素が行き届いていないおそれがある。

▪19秒以下:過呼吸の可能性が非常に高い。体が「細胞レベルの酸欠」状態にあると考えられる。

まとめ

▪️呼吸で吸った酸素は血液中をヘミグロビンにくっつく形で全身に運ばれ、二酸化炭素によってヘモグロビンと切り離されて各細胞に行き届く

▪️慢性的に「多く吸って吐く」過呼吸が常態化すると、体内の二酸化炭素が減少し、呼吸で吸った酸素が脳や体の細胞にまで行き届きにくくなる=「細胞レベルの酸欠」

▪️ストレス漬けの生活、栄養が不足、偏った不適切な食生活などで交感神経が過剰に優位になると、過呼吸になりやすい

▪️「細胞レベルの酸欠」は体のエネルギー不足を招き、「慢性的な疲労」の原因になる。

 次回は「現代人の体を蝕む不健康現象」の2つめ、「口呼吸」をご紹介していきます。

 最後まで読んでいただき、ありがとうございます。

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