現代人を蝕む不健康現象④「刺激の偏り」
みなさんこんにちは。学芸大学駅徒歩5分、パーソナルトレーニングSTUDIO BE FREEトレーナーの吉田です。
『現代人を蝕む不健康現象』と題してお送りしてきています。前回は「体が迷子」についてお話をしてきました。
今回は「刺激の偏り」についてお送りしていきます。
目次
- ○ 感覚刺激の偏りも脳に悪い
- ・膨大な視覚情報にさらされている現代
- ・異常な量の視覚情報で脳が疲労している
- ○ 過剰な視覚情報は睡眠を阻害する
- ・寝る前のスマホ操作は睡眠の質を低下させる
- ○ 眠るまでに10分かかるのは正常
- ・異様に寝つきが良い人は逆に要注意!?
- ・不調の悪循環
- ○ 問題解決には「脳と体の結びつき」を強化することが必要
- ○ まとめ
感覚刺激の偏りも脳に悪い
前回の記事では、脳にインプットされる感覚刺激が不足すると、「ボディマップ」がぼやけてしまうというお話をしてきました。
具体的には、デスク中心の働き方、車や電車での移動、自宅と職場の往復という単調な生活などで体を動かす機会が少くなり、それによって、脳にインプットされる感覚刺激が少なくなることで、
▪️脳は使わない機能を捨てて、体は思うように動かなくなる=体が鈍る
▪️ボディマップが不明瞭になることで体の緊張が高まり、交感神経が過剰に優位になり、様々な体の不調が起こるリスクが高まる
ということでしたね。
ところが、運動不足の現代人は刺激不足の生活を送っている一方で、部分的には「刺激過多」という刺激の偏りがあるともいわれています。どういうことなのかを説明していきましょう。
膨大な視覚情報にさらされている現代
正常な脳と身体の状態とは脳に情報を入れるインプットと行動のアウトプットのバランスがとれている状態です。ところが、現代人は体を動かす機会が少ない代わりに、スマホやインターネットを通じて、とくに膨大な視覚情報の波にさらされ続けています。
一説には現代人が1日に眼から得ている情報量は、近代化前の社会に比べれば1年分にあたるかもしれないと言われるほど、その量は過剰になっています。スマホやパソコン、テレビはもちろん、最近は電車の中やタクシーの後部座席にも液晶画面が設置され、動画広告などが流れています。
異常な量の視覚情報で脳が疲労している
このようにテクノロジーの発達によって視覚から入る情報が著しく増えている反面、私たちの脳と体の構造は20万年前からほとんど変わっていません。
これはパソコンでたとえれば、ストレージもプロセッサも同じなのに、何百倍ものデータを入れている状態と同じ。これでは処理の速度が落ちて、砂時計がクルクルと回り続けているようなものです。
その結果、脳内も同じように視覚情報を処理しきれない状態になり、「脳疲労」と呼ばれるような状態になってしまいます。。
過剰な視覚情報は睡眠を阻害する
このように、現代の私たちの脳は常に大量の視覚情報を処理しなければならず、過緊張に陥っているわけですが、これは睡眠にも影響を及ぼし、
「寝つきが悪い」
「寝ても疲れが抜けない」
など、睡眠トラブルが起こりがちになります。
じつは日本人は世界的に見て睡眠時間が比較して短く、睡眠トラブルを抱えている人も多いといわれています。2017年には「睡眠負債」という言葉が流行語大賞のトップ10入りもしました。これは睡眠不足が借金のように積み重なり、様々な不調を引き起こす状態を指した言葉ですが、慢性的な睡眠不足の状態では疲れは抜けず、病気のリスクも高まります。
寝る前のスマホ操作は睡眠の質を低下させる
もちろん、睡眠をとって休むことは脳にとっても重要です。起きている間、脳はあらゆる情報をインプットして働いていますが、同時に老廃物も溜まっていきます。
脳はこうした老廃物を睡眠中に処理しています。そのため、休ませる=「刺激を与えない状態」が必要になのです。
寝つきが悪くて不眠に悩んでいる人は、日中に動いていないために自律神経脳のリズムが崩れています。寝る前についついスマホを見てしまう人も多いと思いますが、それでは脳が興奮モードの交感神経を抑制できません。結果、リラックスモードの副交感神経優位に切り替えられないため、ますます体は寝るモードに入れなくなるおそれがあるのです。
眠るまでに10分かかるのは正常
一方「寝つきのいい自分はベッドに入った途端に眠れるから大丈夫」と安堵している人もいるかもしれません。しかし、ベッドに入って5分以内に眠ってしまうのも実は適切な睡眠が取れていない可能性があります。
というのも、通常ヒトは10分ほどまどろみ、やがて眠りに落ちるのが正常と言われています。「寝つきが悪い」と言いながら10分後に寝息をたてているという人は通常の睡眠が取れていると考えられます。
異様に寝つきが良い人は逆に要注意!?
一方、5分以内にコロッと眠ってしまう人は、要注意です。この場合、日頃から脳が眠くなっているにも関わらず、刺激によって無理やりに起こしているような状態(行動誘発性睡眠不足症候群と呼ばれています)になっている可能性があるからです。
こうした人は、日中に眠気があり、休日は普段よりも長く寝る傾向があります。これは、慢性的な寝不足によって、典型的な「睡眠負債」を抱えている状態。本人は十分に寝ているつもりでも、脳や体にとっては睡眠が不足している状態なのです。
脱水症状が出て初めて水分不足に気づくように、
▪️異様によい寝つき
▪️日中に眠気
▪️寝ても疲れが抜けない疲労
などは、無自覚な睡眠不足のサインかもしれませんので、注意が必要です。
不調の悪循環
ここまでご紹介してきたように、インターネットとスマホの普及、そして運動不足の現代社会は体を動かすことで体全体から得られる感覚刺激全般が不足して「脳と体の結びつき」が弱くなりがち。その反面、視覚情報だけは異常に増えています。脳にとっては非常にアンバランスな環境になっているんですね。
その結果、
「運動不足+過剰な視覚情報で脳と体はストレス状態→呼吸が乱れ、過呼吸や口呼吸になり、体が酸素不足+睡眠の質の低下→疲労が回復できず、さらにストレスが増大」
という悪循環に陥っている方が増えているのです。
問題解決には「脳と体の結びつき」を強化することが必要
ここまで、『現代人を蝕む不健康現象』と題して、
▪️過呼吸
▪️口呼吸
▪️体が迷子状態
▪️刺激の偏り
の4つをご紹介してきました。
「病気ではないけれど、体がおもだるい」という現代特有の不調を改善するには、この4つの不健康現象を改善し、弱くなった「脳と体の結びつき」を強化する必要があります。
まとめ
▪️現代は運動不足で脳が感覚刺激が不足している反面、逆にスマホやパソコン等の影響で視覚刺激は過剰になっている
▪️視覚刺激が多過ぎると、脳はその対処に追われ、処理能力が限界を超えてしまう。その結果、「脳疲労」と呼ばれる状態になる
▪️特に寝る前のスマホ操作は交感神経を刺激して脳が興奮モードになり、睡眠の質を低下させてしまう。
▪️現代人は「運動不足+過剰な視覚情報で脳と体はストレス状態→呼吸が乱れ、過呼吸や口呼吸になり、体が酸素不足+睡眠の質の低下→疲労が回復できず、さらにストレスが増大」の悪循環に陥っている
次回はこれらの問題を解決するための具体的な方法をご紹介していきます。
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。